
片付けや掃除が思うように進まず、「なぜ自分はこんなにできないのだろう」と悩む日々は、想像以上に心身への負担が大きいものです。
やる気がないわけでも、努力を怠っているわけでもないのに、片付かない空間に苛立ちを覚えたり、掃除に取り掛かること自体が億劫に感じられたりする背景には、脳の特性や認知の仕方の違いが影響している可能性があります。
今回は、掃除が困難になる要因として考えられる障害との関連性に触れつつ、どなたでも実践しやすい具体的な掃除の工夫について解説します。
発達障害の特性として、物事を順序立てて理解したり、全体像を一度に把握したりすることが苦手な場合があります。
例えば、視覚優位な特性を持つ人は、部屋に散らばった物の形や色にはすぐに気づきますが、それらが「どこに、どのように片付けられるべきか」という空間的な把握や、片付けという作業全体の流れを捉えることが難しいことがあります。
また、注意の切り替えが苦手な場合、一つの物や作業に集中しすぎてしまい、本来の掃除の目的から逸れてしまうことも少なくありません。
こうした認知の特性は、どこから手をつければ良いか分からず途方に暮れたり、注意が散漫になって作業が中断したりする原因につながり、結果として片付けや掃除が困難な状況を生み出します。
実行機能の一部である計画立案の困難さは、掃除の段取りを大きく妨げます。
掃除とは、単に物を動かしてゴミを拾うだけでなく、「まずどこを掃除するか」「次にどのような手順で進めるか」「どのような道具が必要か」といった、一連の計画と実行が求められる作業です。
例えば、「今日はリビングの掃除をしよう」と決めたとしても、そのために必要な道具(掃除機、雑巾、洗剤など)をリストアップし、それらを準備し、さらに「床→棚→窓」のような具体的な手順を頭の中で組み立てることが難しい場合があります。
この計画の立案や実行が困難な場合、掃除を始めるための第一歩を踏み出すこと自体が大きなハードルとなり、結果として「掃除ができない」という状態に陥りやすくなります。
触覚、聴覚、嗅覚など、特定の感覚に対する過敏さも、掃除への意欲を著しく低下させる要因となり得ます。
例えば、掃除機の大きな動作音やモーター音に強い不快感を覚え、作業を続けることが困難になるケースは少なくありません。
また、洗剤の強い匂いや、ホコリが舞うときの空気の感触、特定の素材に触れる際の不快感などが、掃除そのものを苦痛な体験に変えてしまうこともあります。
これらの感覚的な不快感は、単なる「苦手意識」を超え、生理的・心理的な負担として強く現れるため、自然と掃除を避けたいという気持ちが生まれ、積極的な取り組みを妨げる結果につながります。

掃除に集中する時間を作るのが難しい場合、「ながら掃除」は非常に有効なアプローチです。
これは、テレビを見ながら、好きな音楽を聴きながら、あるいは家族や友人と会話をしながら、といった他の活動と並行して行う掃除のことです。
掃除に全神経を注ぐのではなく、日常のルーティンの中に「ついでに」掃除を取り入れることで、心理的なハードルが大幅に下がります。
例えば、ドラマのCM中にテーブルをサッと拭いたり、好きな番組を見ながら床に落ちた髪の毛を拾ったりするだけでも、空間は少しずつきれいになります。
「完璧に」ではなく、「少しでもできれば良い」という意識で取り組むことが、継続の鍵となります。
「ついで掃除」とは、日常生活の様々な行動のついでに、決まった場所を掃除する方法です。
例えば、歯磨きをしながら洗面台の鏡を拭く、料理の合間にコンロ周りを軽く拭く、コーヒーを淹れるついでにキッチンのカウンターを拭く、トイレを使ったついでに便器をサッと掃除するなど、既存の習慣に掃除の行動を紐づけることで、新たな習慣を意識的に作る必要がなくなり、自然と掃除ができるようになります。
このように、日常生活の隙間時間を活用して小さな掃除を積み重ねることで、大掛かりな掃除への抵抗感が薄れ、きれいな状態を保つ習慣が身につきやすくなります。
「掃除は完璧にきれいにしなければ意味がない」という考え方は、かえって掃除への意欲を削ぎ、精神的な負担を増大させることがあります。
発達障害などの特性を持つ方々にとって、完璧な状態を目指すことは非常に困難であり、達成できないことへの自己否定感につながりかねません。
そこで大切なのは、完璧主義を手放し、自分なりの「完了」の基準を設定することです。
「今日はここまででOK」「8割できれば十分」といった、無理のない目標を設定し、少しでもきれいになった状態を肯定的に捉えることが重要です。
掃除の目的を「完璧な状態の維持」から「快適に過ごせる空間を作ること」へとシフトさせることで、掃除への取り組み方がより柔軟になり、継続しやすくなります。

掃除が困難に感じられる背景には、発達障害の特性による認知の困難さや計画性の問題、感覚過敏などが影響している場合があります。
しかし、これらの要因があるからといって掃除を諦める必要はありません。
「ながら掃除」や「ついで掃除」といった、日常生活に溶け込ませる工夫を取り入れることで、心理的なハードルを下げ、負担なく掃除を習慣化することが可能です。
また、「完璧でなければ」という考え方を手放し、自分なりの「完了」の基準を設定することも、前向きに掃除に取り組む上で大切な視点となります。
ご自身の特性や生活スタイルに合った方法を見つけ、少しずつでも快適な空間づくりを進めていきましょう。