特殊清掃の報告で「作業後の数値が下がりました」と聞いても、その数字だけでは、何が変わったのか分かりにくいものです。まずは何を表す表示なのかを確かめ、同じ機器と条件で測った作業前後の記録を見せてもらいましょう。
臭気計の表示、嗅覚を使って求める臭気指数、特定の成分の濃度は、それぞれ意味が異なります。表示名や単位が不明なら、数字の大小を比べる前に説明を求めることが大切です。
手元の報告書やメールを読みながら確認できる項目をまとめます。資料をそろえるために、状態の分からない室内へ入り、測定や写真撮影をする必要はありません。
まず、記録にある数字の尺度を確認する
記録の見出しに「臭気測定」と書かれていても、測定方法まで分かるとは限りません。機器名・型式、表示名、単位の有無を確認してください。画面の写真を受け取った場合も、どの表示を説明しているのか聞いておくと、読み違いを防げます。

| 記録にある表示や名称 | 読むときの確認 | 数字だけで混同しないもの |
|---|---|---|
| 臭気計・ニオイセンサーの表示 | その機器が何に反応し、どの尺度・モードで表示しているか | 人が感じる強さ、特定成分の濃度、臭気指数 |
| 臭気指数 | 嗅覚を用いる所定の方法で求めた記録か | 臭気計の画面に出た相対表示 |
| 特定成分の濃度(ppmなど) | 成分名と、使用機器が測定対象としている成分 | 室内のにおい全体の評価 |
| 残留オゾンの濃度 | オゾンを対象に、どの機器・条件で確認した記録か | 臭気計で見たにおいの変化 |
この表は、受け取った資料を読むための整理です。各機器の表示を互いに換算する表ではありません。
臭気計の表示と臭気指数は分けて読む
神栄テクノロジーの「OMX-ADM」のFAQでは、測定しているにおいの相対的な変化を表示し、脱臭前後などの比較に使う機器として説明しています。また、同機器の参考機能である「Odor Intensity」の表示は、人の嗅覚による臭気強度そのものとは異なるとされています。神栄の機器FAQ
一方、臭気指数は人の嗅覚を用いる方法で求める尺度です。環境省の告示にも、嗅覚で臭気の有無を判定する者を用いる方法が示されています。機器の数字に「臭気指数」という名前を付け直して読むことはできません。環境省の算定方法
「この数字は、機器独自の表示ですか。それとも臭気指数を測定した結果ですか」と聞けば、専門用語に詳しくなくても、数値の種類を確かめられます。ここで挙げたメーカー型式は表示の違いを理解するための例で、こころテラス東海の使用機器を示すものではありません。
ppmの記録は、何の成分を測ったかまで聞く
ppmと書かれた数値を受け取ったときは、成分名を一緒に確認しましょう。「何の濃度を測りましたか」「その成分を対象とする機器ですか」という質問です。特定の成分の濃度と、複数の成分が混じったにおいの強弱は、同じ意味ではありません。カルモアも、成分濃度、嗅覚による測定、ニオイセンサーの簡易測定を分けて案内しています。カルモアの臭気測定案内
残留オゾンの濃度も、対象を特定して読む別の記録です。オゾン濃度計には、測定範囲に応じた機器仕様があります。臭気計の表示が低いという説明を、残留オゾンの確認や再入室の判断へ読み替えないでください。オゾン濃度計の製品案内
同じ型式でも、別の機器の数字は慎重に比べる
以前の会社と今回の会社から、どちらも「臭気計の値」を提示されたとしても、数字だけを横に並べるのは避けましょう。機種によって表示や測定対象が異なり、同じ型式でも機器ごとの感度差がある場合があります。
神栄のOMX-ADMのFAQは、複数の機器には個体差があり、同じ一台で繰り返し測る比較に再現性があると説明しています。そのため、「同じ型式ですか」に加えて、「前後とも同じ機器を使いましたか」まで確認すると、比較の前提が分かります。
表示設定や測定準備も機器ごとに確かめたい点です。新コスモス電機の「XP-329m」の製品資料では、ベース調整、測定対象、使用温湿度の条件、校正について案内しています。別の機器にも同じ設定や校正条件が当てはまるという意味ではありません。新コスモス電機の製品資料
確認する際は「今回の型式では、どの準備や校正が必要で、どのように確認しましたか」と、その機器に沿った説明を求めます。同じ一台を使っていても、場所や表示設定などが違えば、そのまま前後比較できるとは限りません。
作業前後の数値を、条件付きの一組で受け取る
比較したいのは、作業前後の数字だけではなく、それぞれを測った条件です。記録を渡してもらえる場合は、前後の値と機器・表示設定・測定場所を対応させ、時刻や周囲の状態も一緒に説明してもらいましょう。

「同じ条件」とは、作業前と後を同じ時刻に測るという意味ではありません。測定した時刻を残し、場所や設定など、そろえた条件と変わった条件を分けて読むための考え方です。
空欄を埋めるより、分からない条件を残す
次の表は、担当会社へ聞く項目を整理するための編集例です。実際の測定値や、こころテラス東海の報告書の様式ではありません。
| 確認項目 | 作業前の記録 | 作業後の記録 |
|---|---|---|
| 機器の型式・同じ一台か | 型式と機器の識別を確認 | 作業前と同じか確認 |
| 表示名・単位・設定 | 記録にある名称を確認 | 同じ表示・設定か確認 |
| 測定値と測定場所 | 値を場所・高さと対応させる | 対応する場所の値を確認 |
| 測定した日時 | 記録を確認 | 記録を確認 |
| 窓・換気・空調、温湿度 | 分かる条件を確認 | 同じ条件と異なる条件を確認 |
| 測定時の作業状態 | 何をする前の記録か確認 | どの作業の後か確認 |
記録にない条件は、後から推測して埋めず「記録なし」「説明待ち」と残してください。測っていない場所を、表示ゼロの場所として扱うのも誤りです。未測定と、測定して得た表示は分けておきます。
すべての項目を同じ書式で受け取れるとは限りません。必要な確認事項を伝えたうえで、書面、画面の写真、データ、口頭の説明など、今回どの方法で確認できるか相談しましょう。
条件が違う記録は、違いの説明を添えてもらう
例えば、前の資料は「居室の中央」、後の資料は「玄関付近」だったとします。これは場所の記載を読むための例で、実案件の測定記録ではありません。このままでは同じ場所の前後変化が分からないため、「居室中央の作業後記録はありますか」と聞けます。
前後で窓の開閉や換気の状態が違う資料なら、「条件が変わった理由と、その違いを含めてどう読むのかを教えてください」と確認します。条件差があることだけで測定の誤りや施工失敗を決めつけず、比較できる範囲を説明してもらうことが大切です。
追加の確認が必要かどうか、必要ならいつ・どの条件で行うかも担当会社へ相談してください。自分で窓を閉めて待ったり、入室して測り直したりすることを前提にする必要はありません。
数値の変化と、数字だけでは分からないこと
同じ機器・表示設定・場所で、条件もそろえた記録があれば、その地点での相対的な変化を読む材料になります。説明を受ける際は、「この比較から何が分かり、何はまだ確認できていませんか」と聞くと、記録の意味がはっきりします。
一地点の結果を部屋全体の評価に広げたり、表示が低い・ゼロという理由で健康上の安全、再入室、完全消臭を決めたりすることはできません。機器が捉える範囲と、人が感じるにおい、作業対象の確認は、それぞれ説明が必要です。
気になるにおいがある場合は、すでに分かっている範囲で、「どの場所で、いつ、どのようなときに気になったか」を担当会社へ伝え、記録と対応させて確認してもらいましょう。
オゾンを使う作業であれば、においの記録とは別に、入室可否を誰がどの方法で確認するのか聞いてください。不動産の売却・賃貸などに関わる告知義務も、臭気計の表示から判断する事項ではありません。数値の報告と、それ以外に必要な確認を分けて考えましょう。
今回の測定と説明方法を、清掃会社へ確認する
測定記録を受け取ったら、表示の意味を確認し、作業前後の比較に使える条件がそろっているかを見ます。不明な欄があれば、測定した担当者の説明と一緒に残しておきましょう。
こころテラス東海のFAQには、臭気測定機を用いて消臭の進捗を数値化する旨が掲載されています。ただし、この案内だけでは、今回使う機器や測定場所、記録を受け取る方法までは分かりません。こころテラス東海のFAQ
ご相談の際は、次のように確認できます。
- 今回、どの範囲で測定を行いますか。使う機器と表示の意味を教えてください。
- 作業前後は、どの場所・条件で比較しますか。異なる条件があれば説明を受けられますか。
- 数値と条件を、どの方法で受け取れますか。未測定の場所は分かる形になりますか。
- 記録に不明な点や気になるにおいがある場合、どこへ確認を依頼すればよいですか。
特殊清掃をご検討の方は、状況と希望する作業範囲をお伝えいただき、今回の測定実施や説明方法も合わせてご確認ください。すでに手元にある資料から相談を始められます。こころテラス東海の特殊清掃サービス・ご相談